この記事では、イギリスの高速鉄道について紹介します。高速鉄道の定義については諸説ありますが、最も一般的な定義である時速200km/h以上で走る列車を対象とします。
イギリスの高速鉄道は他のヨーロッパ諸国等と比較すると、やや遅れを取っています。高速列車のための専用線の建設がまだ進んでいないことが背景にあります。
2003年にイギリス初の高速新線CTRL(後の「High Speed 1」)が開通、2007年11月にはロンドンまで開通し、イギリス側でもユーロスターが高速で走るようになりました。結果として、パリ〜ロンドン間は2時間15分で移動できるようになりました。
営業中の高速鉄道
現在イギリス国内で運転中の高速鉄道の一覧は以下のとおりです。
列車名 | 牽引方式 | 最高営業速度 |
---|---|---|
InterCity 125 | ディーゼル機関車 | 200km/h |
InterCity 225 | 電気機関車 | 200km/h |
Eurostar | 電車 | 300km/h |
Javalin | 電車 | 225km/h |
Pendolino | 電車 | 200km/h |
Adelante | ディーゼル式気動車 | 200km/h |
Voyager | ディーゼル電気式気動車 | 200km/h |
Super Voyager | ディーゼル電気式気動車 | 200km/h |
Meridian/Pioneer | ディーゼル電気式気動車 | 200km/h |
以下では、主要な列車について簡単に紹介していきます。
InterCity 125
InterCity 125(HST)は1976年に導入されたディーゼル機関車牽引の特急列車です。125は最高速度が時速125マイル(約200km)の意味です。InterCity 125の最高速度は201キロを誇り、旅客鉄道としてはイギリス発の高速列車にとなりました。InterCity125は比較的カーブが少なくて、初期投資の少なくてすむ西海岸本線に最初に導入されました。
InterCity 225
InterCity 225は、1989年にイギリス国鉄が新たに導入した電気機関車牽引の特急列車です。225は最高速度が時速225kmの意味です。最高速度は225km/hですが、安全性を考慮して営業上は200km/hに制限されています。
Pendolino(ペンドリーノ)

ペンドリーノ
ペンドリーノは、バージントレインズが西海岸本線に導入した高速列車です。
Javalin(ジャヴェリン)
ジャヴェリンは、サウスイースタン鉄道が運行する高速列車です。High Speed1の区間は225km/h、在来線区間は160km/hです。イギリス国内区間のみを走る列車としては、最高速度を誇ります。ジャヴェリンの車両は、日本の日立製作所が製造しました。
イギリスの高速鉄道の歴史
イギリスの高速鉄道の歴史を簡単に振り返ってみます。イギリスは19世紀から20世紀前半にかけて、世界の高速鉄道をリードする存在でした。1938年にマラード(Mallard)号が時速200kmを記録し、当時の蒸気機関車では最高速度を記録します。
しかしその後は技術の進展は続いたものの、イギリスの高速鉄道計画はやや他国に遅れることになりました。フランスや日本は専用線を用いて高速鉄道を走らせましたが、イギリスは既存の線路を使って高速鉄道を走らせるという方針を採用したのもその一因です。
実際のところ、1970年代中盤まで最高速度は時速160kmにとどまりました。1970年台にはAPTと呼ばれる高速鉄道の試作列車が登場しましたが、プロジェクトは中止になりました。
2000年台になると、Adelante、Voyager、Super-Voyagerなど、動力分散方式を利用したディーゼル気動車が登場します。最高速度は200km/hです。
2008年にHigh Speed 1が開通し、ロンドン〜パリ間が2時間15分で移動できるようになりました。イギリスの高速鉄道は他国と比較するとまだまだ後塵を拝していると言っていいでしょう。今後の計画に注目です。