イギリスの鉄道【基礎編】

イギリスは世界に冠たる『鉄道発祥』の国です。この鉄道発祥の地という誇りと伝統が、イギリスの独特な鉄道文化を形成してきました。国土の広さや人口密度など様々な要因が絡み合い、鉄道は公共交通機関として高い人気と実績を誇っています。

このページでは、イギリスにおける鉄道の概要を述べていきます。イギリスの鉄道の歴史について詳しく知りたいという方は、イギリスの鉄道【歴史編】をご覧ください。

運営主体について

1994年、国営企業のイギリス国鉄(British Rail)は分割・民営化されました。その結果、駅や線路などのインフラ設備は実質的な国営企業である「Network Rail」(ネットワーク・レイル)が管理・運営することになりました。

そして列車の運行は、25以上の民間会社(Train Operating Companies、略してTOCs)によって実施されています。インフラ設備の管理主体と列車の運行主体が異なる、いわゆる「上下分離方式」の採用です。

ナショナル・レイルのロゴ

ナショナル・レイルのロゴ(チャリング・クロス駅)

TOCsは地域や路線ごとに分かれ、フランチャイズ方式によって10年前後の契約をイギリス政府と結びます。このTOCsを統一したブランド名が「National Rail」(ナショナル・レイル)です。

National Railは日本のJRに相当すると言うこともできますが、その運営方式には異なる部分も多いです。以下はNational Railに所属している鉄道会社の一覧(2013年時点の情報)です。

TOCs一覧
会社名 運行地域
Arriva Trains Wales ウェールズ周辺
c2c ロンドン、ロンドン東部
Chiltern Railways ロンドン〜バーミンガム
CrossCountry イングランド〜スコットランド
East Coast 東海岸本線
East Midlands Trains イースト・ミッドランズ
Eurostar ロンドン〜パリ・ブリュッセル
First Capital Connect イングランド
First Hull Trains ロンドン〜ハル
First Great Western イングランド、ウェールズ
First Scotrail スコットランド
First TransPennine Express イングランド北部
Grand Central イングランド
Greater Anglia イングランド
Heathrow Express ロンドン〜ヒースロー空港
London Midland ウェスト・ミッドランズ
London Overground ロンドン近郊
Merseyrail イングランド中西部
Northern Rail イングランド北中部
Peak Rail イングランド中部の保存鉄道
ScotRail スコットランド
Southern イングランド南部
Southeastern イングランド南東部
South West Trains イングランド南西部
Virgin Trains 西海岸本線

TOCsはすべてブランド名「National Rail」で統一され、発券システムも同じです。そのため、複数のTOCsにまたがって乗車する場合も一つのきっぷを購入すれば大丈夫です。

路線網と主要幹線

イギリスの主要幹線

イギリスの主要幹線

イギリスの鉄道網はロンドンを中心に放射状に広がっています。ロンドンが中心なので、ロンドン以外の都市や街を結ぶ路線は本数が少ないなど、不便なことが多いです。

主要幹線の中で最も重要な路線がEast Coast Main Line(東海岸本線)West Coast Main Line(西海岸本線)です。

イギリスの主要幹線
主要幹線 運行区間
High Speed 1(HS1) ロンドン〜英仏海峡トンネル
East Coast Main Line ロンドン〜エディンバラ
West Coast Main Line ロンドン〜グラスゴー
Midland Main Line ロンドン〜シェフィールド

East Coast Main Line(東海岸本線)

【総延長】632km
【運行区間】キングス・クロス駅(ロンドン)〜ウェイバリー駅(エディンバラ)
【最高速度】時速200km/h(時速125マイル)

East Coast Main Line(東海岸本線)は、グレート・ブリテン島の東側を結ぶ主要幹線です。ロンドンからヨークやニューカッスルなどの都市を経由し、スコットランドのエディンバラへと至ります。直線区間が多いため、最高速度は時速200km/hの高速走行が可能です。イースト・コースト本線を端から端まで結ぶ列車を運行しているのがEast Coastで、他にも多くの運行会社が区間を区切って運行しています。イースト・コースト本線は全線が電化されています。

West Coast Main Line(西海岸本線)

【総延長】642km
【運行区間】ユーストン駅(ロンドン)〜グラスゴー中央駅(グラスゴー)
【最高速度】時速200km/h(時速125マイル)

West Coast Main Line(西海岸本線)はグレート・ブリテン島の西側を結ぶの主要幹線です。ロンドンからバーミンガムやマンチェスターなどの都市を経由し、スコットランドのグラスゴーへと至ります。路線には比較的カーブや高低差が多いため高速走行には適していないのですが、Virgin Trainsの振子式車両「ペンドリーノ」によって時速200kmの高速走行が実現されています。ウェスト・コースト本線を端から端まで結ぶ列車を運行しているのがVirgin Trainsで、他にも多くの運行会社が区間を区切って運行しています。バーミンガムやマンチェスターなどの大都市を擁していることもあり、ウェスト・コースト本線はイギリスで最も利用者の多い路線です。ウェスト・コースト本線は全線が電化されています。

列車の種類について

イギリスには日本のような「特急」「快速」「普通」のような列車の区分はありません。そのため、スピードの速い優等列車に乗車しても特急料金は必要ありません。詳しくはイギリスの鉄道【列車の種類】をご覧ください。列車の区別はありませんが、座席は1等(First Class)と2等(Standard Class)に分かれています。

電化率について

イギリスの電化率は1/3程度です。これは他のヨーロッパ諸国に比べると低い数字で、イギリスではディーゼル機関車や気動車がまだまだ現役で多く活躍しています。この低い電化率は、古い線路や設備が多く残っていることが背景にあります。

言い換えれば、19世紀からの古い鉄道遺産が今でも多く残されていると言えます。また当時の蒸気機関車を動態保存する活動が、ボランティアの人たちによって盛んに行われています。

遅延と運休について

イギリスの鉄道は日本と比較すると遅延することが多いです。一昔ほどではありませんが遅延自体が常態化しているので、遅延することが半ば「当たり前」と受け止められている節もあります。日本のような感覚ではなく、遅れは発生するものと考えて余裕を持った旅程を組むといいでしょう。

運休が発生する原因の一つが、補修工事や点検です。イギリスでは19世紀に建設された古い鉄道設備が今でも多く使われており、補修工事や点検が盛んに行われているためです。

またイギリスの鉄道は鉄道誕生した時代のなごりで日曜日には列車の運転本数が少なくなったり、運休することが多いです。基本的には日曜日に旅程を組まないほうが無難です。また、クリスマスなどの祝日にも運転本数がかなり少なくなります。

駅について

駅は基本的に都市の中心部にあります。ただしParkwayという名前がついた駅(例えばBristol Parkwayなど)は町外れにあるので注意が必要です。Parkwayは基本的に車で駅にアクセスする人のための駅です。

ロンドンの駅

日本の東京駅のような「ロンドン駅」という中心駅は、ロンドンには存在しません。10以上のターミナル駅が「」を描くように分散して配置され、それぞれ別の役割を担っています。

ロンドンで盛んに駅が建設された19世紀当時、ロンドンの中心部には重要な建物が多数存在したため、そこに駅を建てることができなかったという事情が背景にあります。

ロンドンのターミナル駅は、行き先(目的地)によって役割が分かれています。ターミナル駅間は、地下鉄で移動することが可能です。

ロンドンの主なターミナル駅
駅名 備考
Cannon Street
Charing Cross
Euston 1837年ともっとも早く開業
Fenchurch Street
Kings’s Cross
Liverpool Street
Marylebone
Paddington
St Pancras International ユーロスターの始発駅。宮殿のような駅舎が特徴。
Victoria ロンドンを代表する駅
Waterloo ワーテルローの戦いにちなむ

インフォメーション

大きな駅にはインフォメーションと呼ばれる窓口があり、列車の発車時刻や運行情報などを確認することができます。列車が遅れた時、また乗り遅れや乗り間違いなどのトラブルの際にはインフォメーションを活用し、対処方法を相談するといいでしょう。時刻表はインフォメーションで入手可能です。

売店

駅の売店は基本的に物価が高いです。もし食事を持ちこむ場合、食料はスーパーなどで事前に調達しておいたほうがいいでしょう。

時刻表について

鉄道会社各社が、それぞれ独自の時刻表を駅などで配布していてます。イギリス全体の時刻表は、トーマス・クック時刻表に掲載されています。トーマス・クックにはヨーロッパ全体の時刻表が掲載されており、日本でも購入できます。

また駅構内にはポスターのような大きな時刻表が貼り出されており、運行する鉄道会社、列車の到着時刻、発車時刻、目的地などを確認することができます。ただ遅延や運休が発生することが多いので、最新の運行情報は駅の運行掲示板やインフォメーションで逐一確認しましょう。

他国との接続

フランス

1994年に開通した英仏海峡トンネルを経由し、高速鉄道のユーロスターがフランスと接続しています。ロンドンのセント・パンクラス駅がユーロスターの始発駅です。

アイルランド

アイルランドの鉄道とイギリス領北アイルランドの鉄道は、相互に乗り入れを行なっています。なおイギリス領北アイルランドの鉄道はノーザン・アイルランド・レイルウェイズ(Northern Ireland Railways)が運営しており、National Railには属していません。

(この記事の内容は随時修正・更新します)